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ボッティチェリの名作「春(LA PRIMAVERA=ラ・プリマヴェーラ)」の謎に挑戦するサイトです。
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(2)「死」を暗示する多くの花々 |
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■植物に意味を込めていたボッティチェリ
世界中の美術館を巡りながらその美術品を紹介するNHKの「世界美術館紀行」という番組で、ウフィツィ美術館が取材されました。私は残念ながらその番組は見ていませんが、2005年に出版された『NHK世界美術館紀行3』という本で、その取材内容が紹介されています。
本によれば、《春》には草原の部分だけでも40種類を超える、500本もの草花が描かれているそうです。画家たちが写実的に植物を描きはじめたのは16世紀頃からであり、ボッティチェリはその最初の画家のひとりだそうです。
また図像学の観点からも、ボッティチェリが知り得たと考えられる文学や哲学、植物学などの書物から花の引用を見つけだし、描かれた植物が何を表すかを徹底的に分析されました。美術史家のミレッラ・レヴィ・ダンコーナさんの説によると、《春》と同じ頃に描かれた祭壇画《聖母子と二人の聖ヨハネ(バルディ祭壇画)》(1484〜85年、ベルリン国立絵画館)には、植物の象徴する意味が文字で書かれており、ボッティチェリがそれらを理解したうえで、《春》のなかにも花々を描いていたのではないかということです。(『NHK世界美術館紀行3 ウフィツィ美術館ほか』日本放送出版協会)
ダンコーナ氏は、メディチ家の象徴であるオレンジは結婚を意味し、ロレンツィオの名を暗示する月桂樹(ローレル)が大小二本あることや、描かれた花に「結婚」や「愛の神秘」「愛の勝利」「愛の炎」などの花言葉が織り込まれていることから、この絵はロレンツィオ豪華王が又従弟のロレンツィーノの結婚祝いに送ったものと推測しているそうです。
■生と死の花
多くの花々は「結婚」をイメージさせる花言葉を持つそうです。イタリアにはダンコーナ氏と同じように図像学的なアプローチにより《春》を読み解く研究者が他にもいます。Roberto Mariniという人もそのひとりで、「Analisi di un Capolavoro Botticelli "La Primavera"(ボッティチェリの傑作《春》の分析)」というサイト で、《春》の植物について詳しく解説をしてくれています。
背景のイチイやイトスギを別にすると、アヤメと月桂樹をメインに配置するという選択により何かシンボルが隠されているのではないかという疑問が湧いてくる。これはレトリカルな疑問だが、ポリツィアーノ(Poliziano, ボッティチェリの指導役だった可能性のある人)がラテン語のlaurus(月桂樹)と人名のLorenzo(ロレンツォ、英仏のローレンスに相当)でことば遊びを行い、ロレンツォ・デ・メディチの紋章で月桂樹は、他ならぬ彼のものとして登場している。もう一つの紋章には、「フィレンツェを描く女性が、月桂樹の陰でユリを手にしている」と書かれている。有名なフィレンツェのユリは実際にはアヤメ(Iris florentina)で、ゼフュロスとの関係を修復する結婚後にクローリス/フローラが作った花がこのアヤメである。おそらくこれは、絵の購入者に対するオマージュだろう。あくまでも推測だが。 (「Analisi di Capolavoro Botticelli "La Primavera"」廣田裕之氏訳)
ところが《春》に描かれた多くの植物の中には、通常の「結婚」という晴れやかなイメージにはおよそ似つかわしくないものが含まれています。
ゼピュロスは2本の木を曲げながら画面に登場していますが、トゲが幹から生えているように見える背景の木はイチイで、ゼフュロスの翼の下にはイトスギが見えます。Roberto Marini氏によると、このイチイとイトスギは「死」に関わりの深い植物であるそうなのです。
背景の墓場と関連のあるイトスギとイチイ(死の木)は、若いシモネッタのみならず、1478年に殺害されたジュリアーノ自身を追憶する絵としての死の意味を強調しているかもしれない。この仮説は、フローラの花飾りに含まれていたように見え、ザクロ(黄泉の国に行く際に口にザクロの種を含めていたペルセポネの神話に関連して)や、彼女の額の重要な部分を占めるキンポウゲのようにあの世と関連のある花の存在を思い出さない限りは除外できないものである。
(中略)
他に死を匂わせるものは草として描かれているシダや短い開花期間の「ノボロギク」、またはかない幸福の象徴であるアネモネである。(「Analisi di Capolavoro Botticelli "La Primavera"」廣田裕之氏訳)
Roberto Marini氏は、《春》に描かれた「死」の意味を持つ植物の意味に、はっきりとある実在人物の死を関連づけています。
『NHK世界美術館紀行3』で紹介されているダンコーナ氏は、(本の中では)この「死」に関わりを持つ植物にはふれず、「《春》は結婚祝いに描かれた絵」である説を支持しています。《春》は結婚祝いに描かれた絵であるなら、ボッティチェリはなぜ「死」の意味を持つ植物を描き加えたのでしょうか。
図像学的なアプローチを試みているダンコーナ氏であれば、この「死」の意味を持つ植物の存在に気づかないわけがありません。もしいつか氏にお会いする機会に恵まれたら、ぜひこの「謎」をぶつけてみたいと思っています。
●この章の主な参考文献・参考サイト
『NHK世界美術館紀行3 ウフィツィ美術館ほか』 日本放送出版協会 2005.6
「Analisi di Capolavoro Botticelli "La Primavera"」 Roberto Marini http://www.thais.it/speciali/Primavera/analisi/analisi1.htm
※2008.06.08/2008.11.01
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禁無断複製
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